照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

桜もおしゃれの開花ももうすぐ

ここ数日寒い日が続いているが、桜へはいい刺激になっているだろう。桜は、暖かさと寒さを幾度か繰り返した後、開花するという。暖かい日ばかり続いたからといって、早く咲くわけではないというのが面白い。コートを脱ぐ日も間近い。またおしゃれさんたちが、目を楽しませてくれるだろう。

そんなことを考えていたら、昨秋、通勤電車で見かけた女性をふと思い出した。ココア色の麻のジャケット、上着よりやや濃いめのスキニーパンツに黒のパンプス、サラリとしたセミロングのヘアスタイルが、知的な横顔に良く似合っていた。街におしゃれさんが溢れても、自分好みのセンスの人に出会えることはめったにないので、とりわけ印象に残っている。

私のアンテナに引っかかってくるおしゃれさんは、皆、姿勢と表情が良く颯爽としている。かつて、見た目が9割という本が話題になったように、やはり人は第一印象で判断されてしまう。自分は中身で勝負だと胸を張ったところで、見知らぬ人にそれを解ってもらうのは難しい。印象が一瞬で決まるなら、それは全体の雰囲気による。

センスの良い人は、全体の雰囲気が光っている。この人の素敵感はどこからくるのだろうと、密かに持ち物のチェックをするのはその次だ。おしゃれな人は無駄がなく、すっきりしている。結局、個人が際立っているから、服も冴えるのだと納得する。誰かが、全く同じファッションをしても同じ雰囲気にはならないだろう。センスには、その人の生き方が表れる。

あるスタイリストさんの本が売れているのも頷ける。その方にも、長い間にはさまざまな苦労があっただろうが、それら全てを自分の糧としてしまった強さが、本人に深みを増している。人は困難に陥った時真価を問われるというが、覚悟を持って、逃げずに受け止め、自分なりの解決策を見いだせた時、それは糧となる。件のスタイリストさんは、そんな苦労など全身のどこにも貼り付けず、いつも笑顔でカッコいい。だが、見えていなくても、センスの背後にある人間性に人は惹かれる。

夏と冬の衣しか持たない雷鳥の如き私が、ファッションに関して言及するのもおこがましいが、おしゃれは好きだ。何を着ようかとクローゼットを開けて、ああ選択肢は無いんだと毎回気付くのだが、それでも手持ちの服で何とかしようと工夫するのは楽しい。前日とはどこかを違えて、気持ちも新たに駅へ向かう。センスの良い人に会えた日は、さらに背筋がしゃんとする。