照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

新生活へのスタートに良い季節

この季節、通勤で利用する電車の沿線には春色が満載だ。ほんの短い区間だが、紫色の花ダイコンに白色の花ニラが土手一面を覆っている。時々混ざる黄色の菜の花が、アクセントになっていて更に綺麗だ。

この地に住むようになってしばらくは、これらの花々に、どれほど心慰められただろうとやや感傷的になる。長いこと錨を下ろしていた場所を離れ、新たな生活へと踏み出して10数年が経った。来し方を懐かしむことはほとんど無いが、この花々に出会う時だけ、自分の歩いて来た道を少しだけ振り返る。

何かを決断し、新たな一歩を踏み出すには、今の季節は最適だ。長く親しんできた風景や人々と離れるには、それなりのエネルギーが必要だ。自分が選んだ事とはいえ、当初はさまざまな思いにとらわれる。そんな時、陽の光や花々の優しい彩りが、人に及ぼす影響は大きい。希望も膨らむ。

だが、もし船出の時期が晩秋だったりしたら、ずいぶん気分も違うだろう。北欧では冬に、鬱で悩む人が増加するというが、これも容易に想像がつく。日本では冬でも、7時前後には明るくなるし、日没までも長い。緯度の高い国々とは簡単に比較できないが、それでも、暗く寒い時期に向かう頃は、心が重くなりがちだ。

若くエネルギーに満ちた人は、いつどこに住もうが大差ないかもしれない。だが、エネルギーが少なくなりつつある人にとっては、時期や住む場所、部屋の向きも、新生活の大事な要素だ。陽の光が自分に与えてくれる力を考慮して、再スタートする時期や場所を選びたい。私の場合は全くの偶然で、丁度良い時にこの地に住むようになったが、経験してみて初めて、その重要性に思いが至った。