照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

ささやかなボランティア体験記〜気仙沼・南三陸町・大槌町

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ひょこりひょうたん島のモデルと言われている大槌町・蓬莱島  
 
東日本大地震から1年後の2012年3月末、JTB企画の1泊2日のボランティアに参加した。地震から長い事考えて続けてきて、ようやく重い腰を上げた格好だ。自分にできるなりの寄付は継続していたが、それだけでは気持ちが済まなかった。自分の身体を動かして、お手伝いしたいと考えていた。現地を自分の目で確かめてみたいという思いもあった。
 
かつて仙台から宮古まで海岸沿いに北上した事があった。釜石観音から見た海は、綺麗なエメラルドグリーンであった。宮古に着いていざ泳いでみると、海草揺らめく8月の海は、陽光に反して冷たかった。それらの風景は、どのように変わってしまったのだろう。
 
行く先は気仙沼だ。金曜日の夜会社から東京駅に直行、東北新幹線に乗車する。仙台を過ぎる頃から降り始めた雪が、一関駅に到着する頃はかなり積もっていた。天候状況で仕事内容は変わるそうだ。明日は何をするのだろう。
 
朝7時過ぎ、駅前のビジネスホテルを出発する時はまだ雪空であったが、気仙沼に着く頃には止んで陽も出てきた。地元のボランティア受入担当者の方の指示で、仕事内容は畑の整地に決まった。
 
畑は海の前にあった。側にはかつて鉄道が走っていたそうだが、それを偲ばせるのはわずかに残った線路のみだ。海からの近さを誇った大谷海岸駅は跡形もない。畑の持ち主に代わって管理しているのは、畑の傍で多目的ホールなどされていらっしゃる方だ。海を背景に執り行われる結婚式は、さぞ素敵だったろうと想わせる立地だ。
 
海から打ち上げられた大小さまざまな石を畑から取り除く作業は、なかなか大変であった。無理をしないでという担当者の方の言葉があったが、皆さん張り切っていたのか予定の3時よりだいぶ早く終了した。
 
昼食時にお聞きした担当者の方の体験談には、考えさせられる事も多く、余計熱が入ったのかもしれない。私も、大きなスコップで土を掘り起こす班に加わって奮闘した。その後は石捨て場として掘られた深い穴へ、掘り出した石を運んで終了だ。道具類を数えて、丁寧に洗う。きれいに成らされた畑を振り返り、達成感を胸に皆でバスに乗り込む。
 
気仙沼市内に戻り、仮説商店街でできるだけの買い物をする。今度は買い物ボランティアだ。買い物の合間には、住宅地の方まで流された船を見たり、地盤沈下した港を歩いたりする。
 
その後で、津波をまぬがれた高台に建つホテルで汗を流してから、一関に向かい東京行きの新幹線を待つ。こうして私のささやかなボランティア第1回目は終了した。その後は土日を利用しての1泊2日で、4月に南三陸町、6月に大槌町へ出かけた。仕事はどこも畑の整地であった。
 
ボランティアはひっそりと行なうものだと思っていた私は、特に誰かに話すこともしなかった。それが南三陸町へ行った時、担当者の方が、「皆さんお帰りになったら、ご家族や地域、職場の方々へこの経験をどうか話して下さい。そして1人でも多くの方が、被害のあった場所へ足を運んで下さるようお伝え下さい。観光で来てくれるだけでも有難いのです」と話された。
 
南三陸町のボランティアセンターでは、ちょっことボランティアの意味で、「チョコボ」なるお土産用のお菓子も販売していた。伝える事もボランティアかと思い、会社でチョコボを配りながら、「南三陸町産のわかめを、スーパーなどで見かけたら買って下さい」と言って回った。
 
数少ないボランティア経験から判断するのは早計かもしれないが、的確な指示を与えることのできるリーダーがいるといないのでは結果に大きな差が出ると感じた。まして異なる複数の団体が同じ作業をする場合は、全体の作業具合を見ながら適宜指示を出していかないと、労働自体が無駄になってしまう。
 
善意の参加者は、動機もやる気もさまざまだ。初めての事に、何をどうすればいいのか戸惑いもある。ボランティの中で班長と指名された者も、初めて顔を合わせた人に対する遠慮があるのか、指示はせずに黙々と自分の作業をするのみだ。その日作業した畑は、予定よりかなり遅れているとのことであったが、当然かなと思えた。
 
作業終了後も道具の数確認をしようとしないので、「道具が揃っているか、数えた方がいいと思います」と提案した。初めてのボランティア体験が素晴らしすぎたのかもしれないが、ちょっと違和感を覚えた2回目であった。
 
だが、 想像以上に凄まじい町の様子を自分の目で見たことに加え、語り部さんの話をお聞きする機会を得た事は本当に良かったと思っている。今後は自分の体力を考慮しながら、自分にできる事を考えて行きたい。そして、(自分の身は自分で守る)と言う意識を持って、日々の生活の中でリスク管理を忘れないようにしたいと思った。 
 
これは旅する場合も同様だ。自分だからこそ気をつけようの心構えが必要だ。ささやかなボランティア体験ではあるが、私に多くの事を教えてくれた。参加させて頂いた事を有難く思っている。