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照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

脇町で阿波のよさを味わいたくなる本ー『街道をゆく 32』

旅・日本
"阿波のよさは、ひょっとすると脇町に尽きるのではないかとかねがね思ってきたが、来たのははじめてである。"(司馬遼太郎・『街道をゆく32 阿波紀行、
紀ノ川流域』・朝日新聞社)、そんなに素晴らしい町だったのかと、ページを繰った途端、目に飛び込んできた文章にびっくりしてしまった。

実際には訪れたから良かったものの、一度目は機会がありながらパスしてしまったのだ。祖谷のかずら橋を経由して高知へ向かう朝、脇町にも寄る気満々で徳島市内のホテルを早めに出発したのであったが、寄らなくても別にいいかと、高速道路を降りる手前を惜しんでしまった。おまけに、うだつの町並みよりは、名物の麦だんごに心を残したものの、わざわざ行くほどでもなかったかなと思っていた。

その2年後、まんのう町(香川県)にある谷川米穀店といううどん屋さんへ行ったついでに、峠を越えて脇町へ行ってみようとなった。以前、かりこ牛について書いたことがあるが、その峠が、まさに牛たちが歩いた道だった。その当時と違って整備された道路は走りやすく、割合簡単に脇町まで行くことができた。この時も、むしろかりこ牛の往き来した道を辿ったことに浮かれていた。

だが、いざうだつの町並みを歩いてみれば、予想以上に、落ち着いて品の良さが感じられる佇まいであった。司馬さんが訪ねられたのは1988年だが、時を隔てて尚、本にも書かれているように、わざわざこの町を訪れる"物好き"はほとんどおらず、ひっそりとしていた。"観光目当てでないことは、物乞いのいやしさが露出していないことでもわかる。"(P・113)と、感服ぶりそのままの光景であった。

司馬さんは、"この脇町なら、ヨーロッパの古い町にくらべても、構造物の厚みや界隈としての造形性においてひけをとらないのではないか"(P・124)、とまでおっしゃっている。こんな良い雰囲気の町を、私は次男に教えられるまで知らなかった。当然、『街道をゆく』も読んではいなかった。実は、前回機会があった折も次男と一緒だったのだが、寄らないと決めたのは私で、しかも、「麦だんご食べなくてもいいよ」と、全く以って無知な私であった。

街道をゆく』の海外編は結構好きで、ガイドブック代わりに携えたりもしたのだが、このシリーズの国内編は読んだことさえなかった。つい数日前、上記の阿波紀行を読み、改めて司馬さんの知識量、その洞察の深さに圧倒された。

シリーズすべてを読んで、これまでの旅を辿ったり、または、新たな地への予備知識とするのもいいかなと思う。今私は、改めて脇町を訪れ、"町のひとたちは、自分たちのここちよさのために町づくりをしているのにちがいない。"(P・113)という言葉を、じっくり味わってみたいとも思っている。

ちなみにうだつの町並みはこちら

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中央屋根の上がうだつ

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