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照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

自分の前に立ちはだかる最大の壁は自分自身

先日のヤマザキマリさんの講演会には、圧倒的に女性、しかも、自分を含め年代が高そうな方々が目立った。漫画に縁がなさそうな層なのにどうしてと訝しく思ったが、テレビを見ない私が知らないだけで、テレビにも結構出ていらっしゃるようだ。日曜美術館にも出たということなので、ご存知の方が多いのかもしれない。

それにしても、皆さんどうして講演会に来ようと思ったのかなとふと思った。多分それは、(自分にも開かれたかもしれない)人生を歩んでいる人への憧れと、(今からでも何かやりたい)と、まだ多少の夢を残している人が、自分の背中を押してくれる何かを探し求めてきた。そんな気がした。

だが、(でも、私たちの時代ではちょっと難しかったわね)とか考えている人には、例え時代が2、30年溯ろうと無理だったに違いない。結局、どんな時代かによらず、自分の前に立ちはだかる最大の壁は、とりもなおさず自分自身なのだ。それに気づかない限り、一歩も踏み出すことなく、憧れで終わってしまう。

現在83歳になられる、ヤマザキマリさんのお母様に話が及んだ時、それがはっきりとわかった。当時としてはかなりリベラルな家庭に育ったお母様が、ヴァイオリンで音楽の道に進みたいと望んだ時、それで生計は立てられないと猛反対を受けたという。だが、一度は諦めて会計事務所で働いていたものの、札幌交響楽団設立の際、楽団員募集に応じ北海道へ行った。

勘当など物ともせず、意思を貫く昭和一桁生まれの女性の独立心には、アッパレと見上げるばかりだ。ミッションスクールに通うおとなしい箱入り娘だったというお母様が、弛むことなく育み続けた音楽への情熱が、自身を取り巻く全ての壁をはね除ける原動力になったのだと思う。

その母上ですら、娘が画家を目指した時、それでは食べていけないと心配されたという。でも、その母に育てられたヤマザキマリさんは、更にパワーアップしていた。同年代の人でも、なかなか同じまねはできないだろう。だから、自分ができないのを、巡り合わせた時代のせいにして嘆いてばかりでは、結局いつになってもできない。

叶えたい夢があるなら、一歩踏み出してみればいい。できるようにするにはどうしたらいいか、立ちはだかっているひとつひとつを、取り除く方法を考えればいい。それこそが、生きている実感、喜びへとつながってゆくのではないだろうか。

こんな元気も意欲もでる講演会、本当に行って良かった。ブドウは酸っぱいに違いないと、手にする努力をする前から、自分に言い訳していてはいられないと、少し勇ましくなっている私だ。