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照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

"鎌倉の名刀を思わせる見事な建築"という言葉に惹かれてー長弓寺(奈良・生駒市)

"鎌倉の名刀を思わせる見事な建築"(P・245)と、『宮大工と歩く奈良の古寺』の著書・小川三夫さんに言わしめる長弓寺って、どんなお寺だろうと出かけてみた。

"訪れる人も少なく、休日もひっそりとしている"とあるが、朝九時半頃に着いてみれば、観光客は私くらいのものの、地元の方々が、参拝のためそれぞれ間をおかず急な階段を上って来られる。犬の散歩コースにもなっているようで、ワンチャンも楽しげに走り回っている。地元に密着しているお寺だ。

"地面にはったようにしっかりしていて、屋根はのろく、ゆったりしています。穏やかです。綺麗だと思いますね。
これが地方に行くと、柱の長い、屋根が威張ったようなものじゃないと受け入れられないんです。家を目立たせたがるというのか。"(P・248)

確かに"威張った"感は無い。だが、スッキリと美しいその姿に、威厳はある。

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長弓寺 本堂

"この縁の下の束を見てください。ゆるく傾斜させてあるんですね。地面の傾斜をそのまま生かして造ってあるんです。亀腹も正面に向かって厚さが違うんです。・・・今だったら地面を均してしまいます。そういうことをしないんですね。地の利をちゃんと活かして、誰も気づかないかもしれないのに、細部に気を遣い、手間をかけてあります。そういう心遣いが、美を生むんですね。"(P・252)

この本で教えてもらわなかったら、そのような配慮には全く気づかないところであった。それにしても、昔の工人たちの仕事ぶりに、またもや感心させられる。別の章での、山で南向きに生えていた木は、そのまま建物でも南に当たる側に使われるとかの話をも思い合わせながら、すべてを自然に即すというやり方に敬服する。物の活かし方を、十分心得ていなければできないことだ。

ちなみにこの寺は、"解体修理のときに屋根裏から銘の入った板が出てきて、それで鎌倉の建築だと確信されて国宝に指定された"(P・254)そうだ。そして、その板には工人の名が入っており、大工として名前が確認された、日本最古の人になるという。

小川三夫さんは、想像になるが、"おそらく渡来系で、飛鳥や奈良の時代から鎌倉まで代々ずっと大工技術を受け継いできた家系の人じゃないか"(P・254)と、推測されている。きっと、技術を継承し、更に独自の美学を加えてきたのかなとも思う。

"この建物全体の、線の持って行き方がすばらしい。"(P・249)とおっしゃる通り、本堂を側面から見ると、その線が本当に見事だ。檜皮葺きが、これまた美しく、私の中には、神社のようなイメージも湧く。

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長弓寺 本堂側面

帰りは、ワンチャンを連れた方の案内で、裏山を登ってからバス通りまで出た。来る時下車した真弓4丁目の、一つ先の停留所であった。

この長弓寺は、近鉄学園前駅北口から6番のバスに乗って行くのだが、日中は10分おきとバスの便も良い。生駒市になるが、近鉄奈良駅からもとても近い。奈良に行ったら、一度は訪ねたいお寺だ。