照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

風景が変わりゆく前に日々せっせと歩く

日々うらうらと散歩を続ければ、都会では近頃珍しくなった純和風の家を見かけた。広い庭に囲まれたお宅は、座敷の周りがぐるっと硝子戸のある縁側になっている。

晴れた日には、冬でもさぞ暖かいだろう。逆に夏は、ここで陽射しを遮ってくれるので、座敷はひんやりとしているに違いない。そして梢を渡ってきた風が、爽やかに吹き抜けてゆく部屋なんて、考えただけで気持ち良さそうだ。それにしても、今時、このようにたっぷり余裕のある空間を持てる家は、珍しい。

自分にはまったく何の関係も無いが、こういうお宅こそ、切り売りせずにずっと残って欲しいと思う。でも現実問題、さまざまな意味で、維持してゆくのは相当大変かもしれない。それでも、積み木細工のようにちまちました家ばかり、もしくはコンクリートの集合住宅に変わってしまうのは、何だかもったいない。

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右手 人のいる辺りがパン屋さん

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逆方向から撮影(左側先の方にパン屋さん)

そんなことを考えながら歩いていたら、偶然、ずいぶん雰囲気の良い一画に出会わした。相当広い敷地に建つ、まるで森の中の一軒家のようなお宅などは時々見かけるが、両サイドが集合住宅にも関わらず、こんな落ち着いた感じの所はなかなか珍しい。中程に人が並んでいたので何かと思えば、皆さんパン屋さんの開店を待っていた。ちょっと興味を惹かれたが、次回のお楽しみにして先へ進む。

後で調べてみるとこの一帯は、江戸時代からの所有者である地主さんが、森を保存しながら住宅開発・再生を行っているとのことで納得。この木々がずっと残されるのかと思うと、他所ごとながらホッとする。それにしても、江戸時代からって凄い。よく続いてきたものと、感嘆するばかりだ。

区内には、トラスト運動で民有地を特別保護区として保存している場所も幾つかあって、年に数回公開されている。だいぶ前、散歩の折にその側を通りかかったら、池のそばの木の上には、アオサギが羽を休めていた。砧公園のバードサンクチュアリで見たことはあったが、住宅街ではずいぶん珍しいと嬉しくなったのを思い出す。

それにしても、散歩していると、凄まじい勢いで、大きな家が消えてゆくのがよく分かる。それに連れて、屋敷の周りや庭の木々も、全て切り倒される。私がこの地へ越して来て十数年経つが、3分の1以上、土地の持ち主が入れ替わってしまった感がある。

ささやかな庵のような部屋に住む身としては、散歩のたび風情のあるお庭やお宅に接し、だいぶ目の保養をさせてもらっている。せめて周辺がすっかり変わってしまう前に、せっせと散歩しておこう。