照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

トマト記念日と名づけたいほど美味しいトマトに出合った日

トマトは大好きだが、スーパーで買わなくなって久しい。散歩の途中、畑の横の直売所で運良くトマトを見つけた時に買うくらいだ。ところが先日、店頭に並ぶトマトが気になり、買ってみた。だが、何の味もしなかった。

子どもの頃口にしたトマトがどんな味だったのか、正直正確には思い出せない。昔のトマトは、多分酸味が勝っていたはずなので、甘くなかったことは確かだ。それでも、酸っぱい物全般が苦手だった私にも、食べられたくらいの酸味だ。日向の匂いもした。それに比べると今のトマトは、無味無臭という感じで、少しも美味しくない。

ところが昨日の朝、こんもり木が茂っている方へ向かって歩いてゆくと、偶然直売所に行き当たった。半分シャッターが降りた内側に人が居たので、近づいてみると、台の上に野菜が並べられていた。

中に入ってみると、トマトは2袋しかない。私の後に、自転車から降りた人が並んだので、念のためトマトを手にしてから、他の野菜に目をやる。キュウリ1袋と立派な葉付き大根もお願いする。締めて500円也。まだまだ続く散歩には、少し不似合いな荷物だが、トマトは見つけた時買うに限る。

何時からやっているのかと聞けば、朝9時からだという。まだ15分しか経っていないというのに、私の後の人が買ってトマトはお終いだ。その方によると、ここは美味しくて、行列ができるほど人気という。高い生垣で囲まれている直売所の裏が、畑のようだ。

お昼に、早速キュウリとトマトを頂くことにした。キュウリをそのままかじると、採れたての食感が蘇ってきた。美味しい。

次に、小ぶりなトマトの上部に僅かに切れ目を入れると、汁が滴ってきたのですかさず口を当ててがぶり。ウッオー!味がギュッとつまっている。これがトマトだ。この匂いだ。こんな美味しいトマト久しぶりと、ただ感激する。と言っても、普通のトマトだ。だが、この当たりになかなか出合えないでいた。

値段は、スーパーとそう変わらない、もしくは若干安いくらいだ。でも、味の違いは歴然だ。高級果物のごとく、ある程度のお金を出せば、それなりに美味しいトマトはあるだろう。だが私は、敢えてそのような別格となったトマトは買わない。普通の値段で、普通に美味しいトマトを味わいたいと思う。昨日は、そんなトマトに出会えた。

こんなトマトなら、食べるのは一年に一度きりでも良い。もっとも、この辺りの直売所では、今ぐらいから7月の初旬頃までしかトマトは出回らない。味わえる季節は、ごく短い。それにしても昨日は、さしづめ、トマト記念日と名づけたいような日であった