照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

贅沢な時間は些細なことで

散歩しながら、あちこちのお宅や公園の桜を目にしているうちに、今年の花見はこれで良しにしようかなと思っていた。だがふと、人の命の有限を思い、いつかまたはないかもしれないと思い直し、池尻大橋まで散歩の足を伸ばしてみた。

目黒川の両岸から、川の中央に向かって伸びる枝には、今を盛りと咲き誇る花々。桜のトンネルが、下の流れと相まって絵になる。だが、川の臭いがやや気になる。橋の上には、にわかカメラマンが大勢いる。

目黒川に沿っって歩きかけたが、すぐ側の首都高・大橋ジャンクションの上に作られた天空庭園の案内にひかれ、そちらへ行ってみることにした。階段を上ると、エレベーターがある。3階に着くと、ずい分広い。

沢山の沈丁花がいい香りを放っている。ゆるやかな登り道になっている庭園を巡っていくと、ライラックも咲いていた。登りつめると、クロスエアータワー9階の目黒区立大橋図書館へと続いている。中へ入ってみた。

この図書館が、国道246号線を挟んでほぼ反対の位置にあった頃とは、雰囲気が全く異なり広々として気持ちがいい。書架の間も広く、本も探しやすい。読みたかった人のエッセイが目についたので、椅子に座ってしばらく読むことにした。

結局、目黒川の桜見物は止めて、図書館からそのまま帰ることにした。目黒川に架かる橋の上にはだいぶ人が増えており、田園都市線・池尻大橋駅の方からも続々と人が来る。これではあの狭い道を、桜を愛でながら歩くのも大変だと、帰ることにして良かったとほっとする。

ゆったり歩くには、沿道の店々が開店準備をしているまでの時間が狙い目だ。ほんの僅かだが、今年も目黒川の桜並木を眺めることができた。お天気も良く穏やかな日曜日、なんと言う贅沢な思いに包まれたことかと、歩きながらいい心持ちになる。休日は、いつでもこのような些細な幸せ感で満ち溢れていたい。