照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

"親しくもない同僚の一言で"インドを旅しようと思うなんて愉快だ

"「インドにでも行ってみたら」。親しくもない同僚の一言で、僕はインドへと旅立った。」"(『あの日、僕は旅に出た』(蔵前仁一幻冬舎文庫・H・28年・裏表紙より)

"親しくもない同僚の一言"で旅に出ようと思ったのかと、まず、裏表紙の内容紹介に、面白そうだなと思った。

"不潔で、物乞いがいっぱいいて、猛烈に暑い。それだけで普通は目的地から落選する。まるでインドのイメージとはかけ離れた無口なカトウくんが「でも、おもしろいんだよ」という。実に不思議だった。いったいなにがおもしろいのだろう。
そのとき、僕は初めてインドに興味を抱いた。(P・21)"

読み始めたら、"僕"の興味に、こちら側もますます引き込まれていく。カトウくんのキャラクターまで、想像してしまう。

裏表紙には続いて、

"・・・だが、この最低最悪の経験こそが、30年に及ぶ旅の始まりだった・・・。いい加減な決断で、世界中を放浪し、旅の出版社まで立ち上げた著者の怒濤の人生"

とあるように、その"怒濤の人生"がユーモラスに綴られているものだから、怒濤というよりは面白渦(こんな言葉は多分ないが)に、自ら巻き込まれていっているような感じさえする。

ミニコミ紙発行時代、人に頼む費用がない間は、奥様と二人、何でも自分たちの労働でこなしている辺りもほのぼのとしてくる。かなり価値観が合ったパートナーじゃないと、こうはいかないだろう。

小難しいことや偉そうなことなど何一つ言ってないのだが、読み終えると、この方の人生哲学がじんわりと伝わってくる。いい本だなと思う。