照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

ボイストレーニングで首こり解消 その1

 
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ユーモラスな狸さん 調布市周辺にて
 
ボイストレーニングの日、首回りがガチガチのまま伺った。仕事の疲れがすっかり溜まってしまっていた。これではいい声が出ないと、いつものようには気持ちが弾まずやや憂うつだった。忙しさにかまけて、呼吸法もイタリア語も全く復習していなかった。道を歩きながらの発声練習からも遠ざかっていた。宿題を忘れた小学生の気分であった
 
姿勢に気をつけて声を出しているつもりでも、油断すると、すぐに自分の癖が出てしまう。首で音階を取らないで下さいとか、首が前に出てきていますよとか、言われると気付くのだが、直すのは難しい。「姿勢が悪いと音程が安定しません。首や肩の力を抜いて下さい。これまでの癖は捨てて、シンプルにいきましょう。」先生の言葉に、いちいち納得する。ただ頭で解っても、身体は素直に従わない。どれほどの癖が付いてしまっているのだろうと思う。
 
自分では、余分な物は捨ててシンプルに暮らしているつもりであったが、現実はそうではなかったと気づかされる。物は処分しても、月日が経つうちに、じわじわと溜め込んでしまったさまざまな思い。それらが、私をがんじがらめに縛っている。それが癖となって、身体に現れているのかなと思う。
 
自分にとって、生きていく上で本当に必要な物や大事な思いとは何だろう。何でもかんでも抱え込んでしまっていないか、もう一度見直してみよう。心だって無限ではない。もっと軽くしてあげなくては、新しい物は入ってこない。良い声を出すためにはシンプルが一番という先生の言葉から、私の思いは自分の生活全般へと広がってゆく。
 
レッスンが終わる頃には、正しい筋肉を動かした結果か全身が汗ばんでくる。首も温まり、良く回るようになっていて驚いた。ボイストレーニングは、私にとって大事な時間となっている。今回のように身体の調子も良くなってしまう。時折先生が話される、音楽が人に及ぼす影響に関するちょっとしたエピソードも実に興味深く、心も潤う。
 
レッスンに向かう時の重い気持ちとは打って変わって、晴れ晴れとして帰る。寒気の底だの、北風だの、天気予報の言葉はすっ飛んでいた。ずんずんどこまでも歩きたい気分だ。「きっちり足にあった靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。」須賀敦子の『ユルスナールの靴』にあった文章が浮かんでくる。身体が解れると、心も解れる。今日もいい一日だ。