照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

ただウロウロしたあげく〜無駄にリスボンを乗り尽くそうの日になっちゃったよ

国立古美術館へ行こうとフィゲイラ広場から市電15番線に乗車したのだが、ベレン方面を目指す観光客で車内はかなりの混雑だ。運よく座れた私は、途中で立つのももったいなく思われ、10時の開館には間があるし 、どうせならベレンまで行っちゃえとなった。

 

それまではまったく予定にもなかったのだが、ベレンとなると、やはりパスティス・デ・ベレンのパステル・デ・ナタ(エッグタルト)だ。ここのエッグタルトは、クリームもパイ生地も、食感が他所のとは全然違っていて、本当に美味しい。私は日頃から、甘い物はほんのお試し程度しか口にしないので、ここのエッグタルトも一度食べたからいいかと思っていたが、やっぱりもう一度味見したくなった。

 

市電を降りて、ジェロニモ修道院へ向かう流れとは逆方向へ真っ直ぐに向かったのだが、既に2列の行列が、店の中から道路の方へと伸びていた。これは、持ち帰り用の列だ。これじゃ店内で食べた方が良いかなと思われたが、ベレンってこんなに距離があったっけと思うほど、ここまで来るのに予想より時間が掛かっていたので、座ってゆっくりお茶を飲む暇はない。

 

結局そのまま列が進むのを待つことにしたが、思った以上に早かった。レジで個数を言ってお金を払い、カウンターの方へと移動する。カウンター前では、レジを済ませた人が皆待っているので、レシートを渡すタイミングを計りながら、店員さんの動きをじっと見ている。そして目があったら、すかさずお願いする。これでようやく、エッグタルトが手元にくる。

 

店の外に出ると、さっきは何だったのというくらい列もなくガランとしている。つい、レジ側の入り口まで覗いてみたが、2、3人しかいない。まったく客足には波があるんだなあと、セカセカと焦り気味に行動した自分がバカらしくなる。

 

まあ、そんなこともあるよと自分に言いながら、店の前の道路を渡る。そこはちょうど、市電やバスの停留所になっている。椅子に座ってエッグタルトを食べ終えても、フィゲイラ広場方面行きの市電は来ない。そのうちバスが来て、そこで待っていたほぼ全員が乗り込む。同じ停留所だから、私の行きたい方面へも行くだろうと軽く考え後に続く。

 

一応、経路になっているかどうか聞いて、通らなければ降りようと思ったのだが、甘かった。最後に私が乗り込んだ途端、ドアが閉まってしまった。すると、ステップの横に立っていた男性が、チケット読み取り機はこちらとジェスチャーで示してくれた。バスの関係者かなと思った私は、前日購入した一日券(24時間)をタッチしてから、その人にガイドブックの停留所名を見せ、そこを通るか聞いてみた。

 

すると、普通の乗客だったようで、運転手さんに確認してくれた。だが、そこは通らないと言う。やっちゃったよと自分の迂闊さに呆れていたら、近くに立っていた別の男性が、(ウロ覚えだが)728番のバスに乗れば良いと、英語で教えてくれた。そして、バスが通りを進んで別の停留所が見えてくると、それを指差し、あそこで待てば良いと更に親切だ。

 

私は、路線毎に停留所も違うことを初めて知る。確かに屋根の上には、バスの番号と停留所名が書かれている。同じ通り沿いにあるからといって、どのバスも同じ停留所に留まるわけではないのだ。

 

またもや、目当てのバスだけがなかなか来ない。それならと、市電の停留所の方へと急いで戻った。すると、タイミングよく市電がやって来た。手を上げて車に止まってもらってから、道路中央にある停留所までダッシュ、何とか間に合った。来た時とはうって変わって、車内はガラガラだ。誰かに聞くこともできず、仕方がないので、自分の下車する停留所を数えながら乗っていたのだが、一つ乗り過ごしてしまった。

 

歩いて戻るには、あいにくこの区間だけがばかに長い。またもや、ア〜アの心境だが、もういいやと国立古美術館に行くのは諦めて、折良くやって来た728番のバスに乗る。客足と一緒で波があるのか、バスや市電も来る時は次々と来る。時刻表に従って運行しているのだからそんなはずはないのだが、どうもそんな印象が拭えない。

 

念のため、カイス・ド・ソドレ方面へ行くかどうか確認すると行くとのことで、安心して乗車する。しかし、慎重さを欠いたこんなことを繰り返しているのも、一日券があるおかげだなと、改めてこの券の有り難さが増す。

 

それと、首都リスボンといえども、英語があまり通用しないポルトガルなのに、バス車内に英語を話す方がいて本当に助かった。今回は、スペインも英語が通じないのが解っていたので、とりあえず片言でもと、多少スペイン語の準備はして行ったが、ポルトガル語は似ているから大丈夫くらいに考えて、何の準備もしていなかった。

 

せめて、前回用意したメモだけでも持ってくるべきであったと考えていたところだったので、言葉が通じる嬉しさはひとしおであった。大した会話というわけではないが、乗り間違えで焦っている時に、こちらが分かる言葉での的確な指示はやはり嬉しい。

 

でも、ただウロウロと、市電に乗って、バスに乗ってを繰り返しただけで、この日唯一の目的地には辿り着くことがなかった。まったくおマヌケとしか言いようのない私だ。だがこの後で、前回(7/1付)書いたピッカ線へと乗ることになったので、終わりよければすべてよしか。

 

ちなみにこの日は、結果として無駄にリスボンを乗り尽くそうみたいになってしまった。自分のテキトーさ加減に、一日券があるからっていい気になるなよ、有効時間も残り少ないぞと釘をさす。しかし、これもまた、気楽な一人旅の良さかな。