照る葉の森から

旅や日常での出会いを、スケッチするように綴ります。それは絵であり人であり、etc・・・。その時々で心に残った事を、私の一枚として切り取ります。

安藤広重の東海道五十三次から古代ローマの円形劇場まで〜サラゴサは幅広い

f:id:teruhanomori:20170603143347j:image

安藤広重  名所江戸百景「大はしあたけの夕立」

 

f:id:teruhanomori:20170603143406j:image

葛飾北斎海上の不二」(本に掲載)

 

サラゴサ博物館には、安藤広重東海道五十三次が思いがけず何枚もあった。出来過ぎのようだが、この日の朝方、藤沢周平の『溟い海』を読み終えたばかりであった。そして、部屋を出る前にゴミ箱に入れてきていた。(アアッ、まだ捨てなくてもよかったのに、これじゃおさらいできないよ)と思うも既に遅しだ。ちなみにこの本は、葛飾北斎が主人公で、江戸で人気上昇中の東海道五十三次の絵師・広重が絡んだストーリーとなっている。

 

でもまあしょうがない。この本を持参したのもまったくの偶然だったのだから。だいいち、私はサラゴサ博物館の存在する知らなかった。ホテルでもらった地図で検討をつけて、検索して初めて、興味ありそうだと行くことにしたのであった。なぜかここも、ガイドブックには載っていなかった。

 

館内は半分くらいが工事中のため、見学箇所はだいぶ限られていたが、ここはなかなか面白い。(以前にも言及したことだが)、丁度、小学生の子どもたちが校外学習で来ていて、旧い時代の発掘物を展示した狭い通路で、館備え付け(廊下の隅に置かれた袋に入っている)の簡易衣装を身に着けた4人ほどが、教師に教えられるままにセリフを口にしての寸劇の最中であった。観客は、その通路に腰を下ろしたクラスメートだ。

 

f:id:teruhanomori:20170603143515j:image

鳥の色合いがきれいなモザイク

 

その間を縫って進むのも躊躇われ、劇が終わるまで私も見学していた。ローマ風の衣装というか、貫頭衣のような簡単な物ながら、演じる子どもたちは真剣そのものでなかなか迫力もある。もちろん私にはチンプンカンプンだが、何となくストーリーを察しながら解ったような顔で楽しんでいた。

 

寸劇が終わると、待たせて悪かったねと言うように、教師がこちらへ笑顔を向けて軽く挨拶してくれる。私を見上げる子どもたちも可愛い。グループでこの博物館を訪れる子どもたちとって、この寸劇がきっと、歴史に興味を持つ第一歩となるに違いない。

 

f:id:teruhanomori:20170603143547j:image

1972年偶然建築現場から発見されたという円形劇場跡

 

f:id:teruhanomori:20170603143615j:image

円形劇場跡

 

1世紀に造られた古代ローマの円形劇場跡・カエサラウグスタ劇場には、高校生くらいの校外学習のグループが来ていた。スペインでは、遺跡、歴史的建造物、博物館、美術館とどこへ行っても大小問わず、校外学習の生徒と一緒になった。仕方なくついて回っている子たちもいるだろうが、私だったら嬉しい企画だ。でも、大人になった今だから言えることなのかな。

 

ところで、翌日たまたま円形劇場跡の前を通りかかると、今度は古代風の衣装を着けた大人が二人、見学者を前に何やら演じ始めるところであった。柵の外からしばらく舞台の方を見ていたが、やや遠すぎてよく分からない。

 

それにしても、子どもたちばかりか大人も、その場に相応しい寸劇をするのだろうか。こういうのって、面白い。ただの遺跡見学より、その時代にいるような臨場感が味わえるかもしれない。歩いていてこんな光景に出会うと、私の眼前にも不意に古代が顔を出すような気さえしてくる。街角を曲がったらいきなりタイムスリップだなんて、まったく楽しいではないかサラゴサ

ピラール聖母教会は天井画も素晴らしい〜その一部はあのゴヤ作という

f:id:teruhanomori:20170603072827j:image

ローマ時代に作られたピエドラ橋から見たピラール聖母教会

f:id:teruhanomori:20170603072732j:image

ピラール聖母教会

 

サラゴサのピラール聖母教会は外観も見事だけれど、内部の天井画がとても素晴らしい。システィーナ礼拝堂(ヴァチカン)のミケランジェロばかりがもてはやされているけど、いやあ、これもなかなかのものだよと一人ごちる。ところで、誰が描いたのだろうとホテルに帰ってから検索すると、ゴヤの名が出てきた。(但し、全体ではないようだ。)

 

ゴヤサラゴサの関係について知らなかった私は、改めてガイドブックをよく読むと、トピックスに、"ゴヤの故郷を訪ねよう"とある。フランシスコ・デ・ゴヤは、サラゴサから44キロ離れた小さな村で生まれたそうで、アクセスや生家に関して書かれている。

 

しかし、ガイドブックには記述されていないが、ここサラゴサにはゴヤ美術館もある。教会の天井画を含め、これとても大事な情報でしょうと思う。ピラール広場にはゴヤ銅像も建っていて、14歳からサラゴサに住んだゴヤを、この街の人々がいかに誇りに思っているかがうかがえる。

 

ところで、ピラール聖母教会の内部には、撮影禁止の貼り紙が至るところにあるが、絶え間無く訪れる観光客は、ミサの間だろうとお構いなしにパチパチ撮っている。係員が、見つけるたび注意しに行くが、一人ではとても手が回っていない。

 

この教会には月曜日から木曜日まで、滞在している間毎日通って足を休めがてらミサの様子を眺めていた。そして、つくづく教会は祈りの場という当たり前のことに思い至った。そして、その土地に暮らす人々が大事にしている場にズカズカ踏み入って、禁止もなんのその、自分の感激を思い出として残したいがために写真を撮るという行為に、疑問を覚えた。

 

確かに、天井画ばかりか、聖母の礼拝堂の作りといい、写真に残したい誘惑に駆られる。彫刻も良い。でも、連日首が痛くなるまで見上げているうちに、こうして自分の記憶に留めるだけで良いと思うようになった。写真に撮っておけばいつでも見られると考えても、結局は、行ったという証拠だけに終わってしまいがちだ。細部が、いつしか記憶から滑り落ちるのなら、それはそれで良い。

 

これまでのように何でもかんでも一応撮っておくかと異なり、旅先で、自分の心にピカッと光った事だけ、最小限の写真しか撮らないというのもずいぶん気楽だ。ガイドブックに載っている目玉とはまったくかけ離れた画でも、自分が気になった部分を大切にしたい。自分の感覚に従ってあちこち街歩きする楽しみは、まさにこれだ。名所見物だけなら一泊するほどのこともないが、サラゴサに4泊したのは実に正解であったと、一人でニコニコと嬉しくなる。

 

バルセロナの街の美しさに感激しながらも、警戒怠りなく緊張していたのとは違って、ここサラゴサに流れるゆったりとした雰囲気は私の心を寛がせる。それに、ホテルが安い。バルセロナの目の玉が飛び出る料金を、ここで調整できるのは何よりだ。ともあれ、本当に落ち着ける良い街だ。

 

 

街中に栴檀の香り漂うサラゴサでホッと一息

スペインに来て5日目、この日は朝9時半のバスでバルセロナからサラゴサまで移動だ。カタルーニャから地下鉄1号線で2駅目の、アルク・ダ・トリオンフ側のバスターミナルまで行く。ホテルの最寄り駅はパセジ・ダ・グラシアだが、カタルーニャまで歩いてもさほどのことはないので、路線によってはカタルーニャ駅を利用していた。

 

切符は既に買ってあったので、ホテルを9時にチェックアウトして向かうと、丁度乗車が始まる直前にバスターミナルに到着した。だいたいどこでもバスは、出発の10分前になると乗車開始となる。ほぼ満席状態のバスは、定刻に出発するとノンストップでサラゴサまで走る。トイレは車内にある。

 

午後1時にサラゴサに着くと、バスターミナルと鉄道の駅が同じ所なので、先ずは次のマドリッドまでのAVEの切符を買っておく。バスだと4時間だが、AVEだと1時間15分なので楽だ。

 

バルセロナからサラゴサまで、車窓からの風景は荒涼とした感じでまったく面白みがなかった。マドリッドまでも、多分同じような所を走るのだと思うと、バスはもういいかなとなった。それに、マドリッドで宿泊を予定しているのは、アトーチャ駅の近くだ。バスだと、ターミナルのあるアベニーダ・デ・アメリカから地下鉄を2度ほど乗り換える必要があるのでやっかいだ。というわけで、電車を選んだ。

 

さてと、市内中心部まで歩いて行くかどうか、手書きで用意しておいた地図を手に外へ出れば、駅前の幅広い道路を見て一瞬でバスにしようと決めた。客待ちのタクシーも並んでいるが、私のモットーは、極力公共交通機関利用だ。いくら料金が安くても、タクシーでサッと着いたのでは面白くない。

 

地球の歩き方 スペイン』には、"51番のバスに乗って・・・旧市街が近い"(P・370)とある。私が宿泊するホテル(オリエンテ)は、旧市街を囲むコソ通りにある。地図で確かめると、51番のバスでは旧市街までちょっと遠い気もするが、バス乗り場に行くと折り良く51番のバスがいた・・と思う間も無く、発車してしまった。

 

でも、すぐに34番のバスが来た。運転手さんにコソ通りに行くかと尋ねれば、「セルカ」と言う。サークルのことかなと勘違いした私が、循環では違うかもしれないとバスを降りると、また「セルカ」と言う。途端に、練習していた「セルカ デ アキ(この近く)」のスペイン語が頭に浮かんだ。セルカは、近くの意味だ。

 

再度バスに乗ってから、カジェ コソ(コソ通り)の近くまで来たら教えて下さいとお願いする。何と間抜けなことに、こんな時の用心にと書いておいたスペイン語のメモを、切符を買い終わった後でどこかにやってしまっていて、肝心な所で役に立たない。仕方がないので、カジェ コソを強調して英語でお願いする。

 

コソ通りに入る手前でバスは右手に曲がるのだが、丁度赤信号で停車した。その間に運転手さんが、コソ通りはあそこと指差しで教えてくれた。お礼を言って、次のバス停で降りた。ちなみにここはCesar Augustoという広い通りだ。教えて頂いたコソ通りに入ってスペイン広場方向に行くと、通りの左側にホテルはすぐ見つかった。

 

この街には4泊するので、本日のミッション終了という感じだが、まだ2時過ぎでお昼も食べてない。部屋に荷物を置くと、スペイン広場に面したカフェで食事してから、ピラール広場へと向かう。スペイン第5の都市ということだが、旧市街の辺りだけを見れば、ずいぶんこじんまりした印象だ。明日から、どんなふうに過ごそうかな。

 

ところで、街の至る所に栴檀の木があって良い香りを漂わせている。ますますもって楽しみだ。

 

f:id:teruhanomori:20170531145110j:image

コソ通りに面した部屋の前の栴檀が良い香りを放つ

日曜日もカタルーニャ広場周辺はバルもカフェも営業しているーバルセロナ

バルセロナ4日目は、既述のようにモンセラットへ行った。この日は日曜日なので、カフェやバルは一様に休みなのかと思っていた私は、モンセラットから戻り、カタルーニャ鉄道から地下鉄に乗り換える前に、駅近くで営業していたカフェでパンなどを持ち帰り用に包んでもらった。

だが、エスパーニャから地下鉄1号線で4ツ目のカタルーニャで下車すると、カタルーニャ広場周辺は軒並み営業していた。アレレ、エスパーニャでわざわざ地上に出て買う必要なかったんだと思う。しかし、美味しいと思っていたバルをはじめ、どこもかしこもお客さんでごった返している。むしろ、調達してきて良かったかなとなる。

バルセロナで、日曜にどの地域でどのくらいの店が、または何時まで営業しているのかは解らないが、少なくとも観光客が集まる辺りは問題なさそうだ。もしものために前日の土曜日に食料を用意しておくことはないんだと安心する。

出発前、少食の私は旅先での食事が一番の気掛かりであったけれど、スペインの場合、バルで自分の胃にあった量を注文できるので、食べ過ぎにも陥らず何とかなった。タパスは有り難い。但し、注文する時は念のため、少しと付け加えるようにした。

4泊なんてあっという間で、ほんのちょっとしか見て回れないうちにバルセロナ滞在が終了してしまったのは、まったくもって残念であった。ホテル代が驚くほど高くなければ、あと数日この街にいたかったというのが本音だ。もう一度来たいと後を引くくらいが、丁度良いかな。ともあれ、翌日の月曜にはサラゴサへ移動する。

 

f:id:teruhanomori:20170530145308j:image

グラシア通りにある カサ・バトリョ (ガウディ作)

 

f:id:teruhanomori:20170530145333j:image

歩道沿いにシャリンバイのような甘い香りの花がいっぱい モンジュイックの丘

 

f:id:teruhanomori:20170530145512j:image

モンジュイックの丘

ゴンドラに乗ってバルセロナ市内を一望〜モンジュイックの丘

ホテル最寄りの駅パセジ・ダ・グラシアから地下鉄11号線で5つ目のパラ・レル駅まで行き、フニクラついでゴンドラに乗ってモンジュイック城まで行ってみた。モンジュイックの丘は、標高173mということだが、ゴンドラに乗っていると、バルセロナ市内が見渡せて、ちょっとはしゃぎたくなるほどウキウキしてくる。

 

f:id:teruhanomori:20170529144919j:image

f:id:teruhanomori:20170529145149j:image

f:id:teruhanomori:20170529145050j:image

右中央より上辺りに見える サグラダ・ファミリア

 

 f:id:teruhanomori:20170529145240j:image

 モンジュイック城 入り口から

 

ゴンドラを降りて、更に、一段高い所にある城から周囲を見れば、より一層全景がくっきりしてくる。青くキラキラと光っている地中海から、シンボル的なサグラダ・ファミリアの方へと視線を移し、街の広がりを眺め、遠くの方に見える丘はグルニエ公園かなと見当をつけてみる。

 

そして、バルセロナって、こんなにきれいな街だったんだと、ランブラス通りを歩いた時以上の感激が、私の内部で静かに巻き起こる。来る前はビクビクものだったのに、早くも、こんな所にしばらく住んでみたいとの思いが湧いてくる。

 

バルセロナに到着してからこの日まで3日間、感じの良い人ばかりに会っている。空港からバスでカタルーニャ広場に着いて、路上でウロウロしないようホテルまでの道筋はメモに書き写しておいたというのに、あろうことかホテルの前を通り過ぎてしまった。

 

1ブロック先まで余計に歩き、違う通りかなと、グルリと回ったところで、テラス席の準備を始めたレストランの店員さんに尋ねてみた。すると、その近くのビルの前に座っていた人も寄ってきて、ホテルの見える角の辺りまで道案内してくれた。あの信号を渡るとすぐとジェスチャーで示してくれたのは、私が歩いてきた所だ。

 

NHコレクション バルセロナ グランホテル カルデロンという長い名前を、カルデロンとのみメモしておいたのがいけなかった。当たりをつけた所がそのホテルだったにも関わらず、ガラス窓の内側がショールームのように思えて、ここは違うと前を過ぎてしまったのだ。よく見れば、入り口の壁にNHコレクションの下にカルデロンとあるではないか。

 

ありったけの用心をしたと胸を張る割には肝心な所が抜けていて、まったく、愚かな我なりだ。でも、その間抜けさを補ってくれるかのように、こんな調子で、ホテルの方たちはもちろんバルの店員さんまで、初日から感じの良い人たちにばかり出会った。朝食を摂るために入ったカフェでも、皆さんとびっきりの笑顔で、オラ〜!、ボン・ディア!と軽やかにあいさつしてくれる。

 

そりゃ、客商売だからだよと言われそうだが、バルセロナではとりわけその快活さが心地良く耳に残った。観光客がこれだけ集まるのだから、それを狙う悪党も多いだろうけれど、私の中でグングン好感度が上がっていった。そこへ、モンジュイックの丘から眺めた光景が更に後押ししたようだ。

 

f:id:teruhanomori:20170529145508j:image

ミロ (タペストリー)

f:id:teruhanomori:20170529145527j:image

f:id:teruhanomori:20170529145547j:image

f:id:teruhanomori:20170529145612j:image

f:id:teruhanomori:20170529145631j:image

帰りはバスに乗るつもりだったが、歩いてみたところ案外近く、とっても気持ちが良い。その気分のまま、当初予定のなかったミロ美術館にも寄ってみる。ここには、楽しい絵やオブジェがいっぱいであった。その後、またカタルーニャ美術館に寄って、前日に引き続き、改めて中世の宗教画に浸る。そして、イヤ〜すっかり気に入っちゃったよバルセロナと、ご機嫌のままホテルへ戻る。

こんなピクニック気分の校外学習は楽しそう!ーバルセロナ

f:id:teruhanomori:20170524132959j:image

サグラダ・ファミリア 前景

f:id:teruhanomori:20170524133151j:image

ちょっとテーマパークっぽい感じ

f:id:teruhanomori:20170524133221j:image

中に乗り物があったら子どもたちが喜びそう

 

バルセロナ2日目。サグラダ・ファミリアへ行こうと地下鉄に乗ると、車内には、小学低学年かと思われる子どもたちが大勢乗っていて、座席で、あるいは立ったまま朝食のサンドイッチを食べている。その子たちの横に、一つ席が空いていたので私も座る。

 

隣席の男の子二人はふざけていて、片方の子が頭を後ろにのけぞらせた途端、思いっきり窓ガラスにゴチンとしてしまった。当人は、一瞬何が起こったのか戸惑ったようでリアクションをしかねている。でも、回りの子たちが痛かったでしょうと同情すると、いきなりおどけ出した。もしママと一緒だったら、泣き出していたかもしれない場面だ。

 

だが、ひょうきんに「オーマイゴッド!」とやっている子を横目で見ると、これは成長が楽しみだと思うほどのハンサム君だ。よく見ると、髪型もオシャレに決めている。私は、痛い思いもパフォーマンスに変えてしまう子が可笑しくてつい笑ってしまったが、それが受けたと思ったのか隣の席の子も「オーマイゴッド!」とやりだす。

 

下を向いてこっそり笑っていたつもりだけれど、別の子どもたちの注意を集めてしまったようで、皆が興味深そうに視線を向けてくる。スペイン語の本に、(歳はいくつですか)とあったのに、何で抜き書きしてこなかったのかと、今更ながら残念に思う。こんな表現、まず使うことなどないだろうと考えたのだが、こんな時こそ役に立ったのに。

 

ドアの近くに立って、やはりサンドイッチをかじっていた男性が引率の教師のようで、時々子どもたちに注意を与える。老人が乗車してくると、席を代わるよう促し、パンを包んだラップの破片が落ちているのを見つけると、拾うよう指示する。名前を言われた子が従わないと、別の子に拾うようにと言う。サグラダ・ファミリア駅に到着する直前、子どもたちが立った後の席からパン屑を手で払い落としてきれいにしていた。ちなみに皆さん、ジュースやら何やらのゴミはすべてポケットだ。

 

教師も含め全員手ぶらなので、どこへ行くのかと思っていたが、この日はサグラダ・ファミリアを見学のようだ。チケットを持たない私が、周辺をぐるっと回って、本日売り切れの札が掛かった売り場近くまで行くと、あの子たちが中に入ってゆくところであった。他の車両にも乗っていたようで、結局子どもたちは20人位いて、大人3人で引率していた。

 

f:id:teruhanomori:20170525120843j:image

ミロの壁画  カタルーニャ美術館

(前にも書いたが)、その後カタルーニャ美術館に行くと、またもや、地下鉄で会った子たちと同じ年頃の子どもたちが、20人ほど、3人の大人に引率されてきて、ミロの壁画の前で、全員が輪になってレクチャーを受けていた。教師の方に顔を向ける子どもたちの表情がとても可愛らしい。歩き疲れてソファーに座っていた私は、言葉は分からないままに彼らの様子をずっと眺めていた。

 

私が美術館を出る時にも、別の子どもたちの一団が入ってきた。この日は、どこも校外学習の日なのだろうか。半分くらいの子が、先の一団同様、お揃いのオレンジ色と黒のジャージをきている。この中から、将来のミロやピカソやダリが出てくるのかもしれない。あるいはガウディもね。楽しみだ。

 

f:id:teruhanomori:20170524134522j:image

中央奥にそびえるのがカタルーニャ美術館

 

 

世界で一番スリが多いというバルセロナにドキドキだった私だが美しい街に感激

世界で一番スリが多い都市一位にランク付けされているバルセロナには、どんな悪党がいるのだろうと、臆病者の私はビクビクしながら思いつく限りの用心をして出かけた。

 

f:id:teruhanomori:20170523131417j:image

カタルーニャ広場

 

5月4日の午前中、ホテルに荷物を預けると、さっそくプラタナスの並木が程よい木陰を作っているランブラス通りを歩いてみた。広い歩道は、ほとんど観光客で埋めつくされている。だが皆さん、あまり警戒心もなく歩いている。私も、悪党はどれかと警戒しながら歩くのだが、やや拍子抜けするほどのんびりムードが漂っている。

 

バルセロナに関しての知識は、サグラダ・ファミリアがあるということ以外皆無である私には、メインストリートがこのように歩道が広く歩きやすいというのは、ちょっと意外であった。東京でいえば、原宿から表参道までの欅並木の中央に、広い歩道がある感じだ。

 

ちなみに、私が宿泊しているホテル(NHコレクション バルセロナ グランホテル カルデロン)の前の通りはランブラ・ダ・カタルーニャといって、カタルーニャ広場から伸びていて、ブランドショップが並ぶグラシア通りに平行しているのだが、こちらもランブラス通り同様、道路の中央が広い歩道になっており、プラタナスの並木の間には、カフェのテラス席もベンチもたくさんあって、散策にはぴったりだ。

 

このように、人が歩きやすい街っていいなと思う。観光客が、これほど集まってくるというのもよく分かる気がする。でも、大都市には、やはり光と影がある。大通りからグエル邸の方に曲がり、尚もそのまま先へと歩いて行くと、やはり、危ないと注意を促す地域には、それらしい雰囲気が漂う。そこを抜けて広い通りまで出てから、再び海側に向かうと、コロンブスの塔が見えてきた。途端に、観光客の波だ。

 

ランブラス通りへと戻り、カテドラルの方へと入って行く。人気が少ない路地では、用心スイッチが入る。例え昼間でも油断できない。なるべく、人波のある辺りを目指して歩を進める。建物と建物の間の狭い道路の感じは、何となくフィレンツェを思い出させる。

 

すると、小型犬を2匹、綱も付けずに走り回らせている人がいて、私の足元にもキャンキャンと甲高い鳴き声をあげながら突進してきたので避ける。飼い主らしき男性は、犬に注意を与えるでもなく、誰かれ構わず噛みつかんばかりに吠えて、狭い路地を走り回っているのを放置している。

 

ほとんど同じ辺りを行き来していて、散歩させている感じではない。もしかして、通行人が犬に気を取られているうちに、悪事でも企んでいるのではと疑ってしまい、たすき掛けしたうえに、更に持ち手を肩にかけたバッグをギュッと掴む。それより、もっと人がいる方へと急ぐと、サン・ジャウマ広場に出た。

 

途端にどこもかしこも観光客だらけで、役所の建物などを写真に収めている。私は、そのままカテドラルへと向かい、中に入ってしばし落ち着く。でも、12時45分で閉まるため、その時間が近づくと警備員が皆を外に出るようにと促し始めた。

 

f:id:teruhanomori:20170523131313j:image

カテドラル

f:id:teruhanomori:20170523131541j:image

カテドラル内

f:id:teruhanomori:20170523131608j:image

受胎告知 〈こりゃまた驚いた!〉という感じの両手

 

カテドラルの前で、この日の朝、フランクフルトからバルセロナまでの飛行機で隣り合わせた中国からのツアーの方たちと偶然出会う。機内で言葉を交わしたのはほんの僅かだったけれど、見知らぬ街で知り合いに会った気分でちょっと嬉しい。相変わらず気は抜けないけれど、スリやひったくに用心してガチガチに緊張していた心が何となくホッとする。

 

飛行機から碁盤の目になった市内を見下ろし、地図のままだと弾んだ気持ちが蘇る。右奥の方からピレーネ山脈、左の方には赤茶色の岩山(後になってモンセラットと気づく)、手前には地中海に面して港があり、その左に広がるのがモンジュイックの丘。地図で覚えただけなのに、まるで見知った街のようで懐かしみさえ覚えた。でも用心!と、かなり気を張っていたのだ。楽しいぜバルセロナ!と、すっかりご機嫌になったまま、人の流れについてバルにも入ってみる。